あとがき 〜「それぞれの落し物」〜
執筆年月日 2004年4月
この作品は、SSFCに投稿しようと思って書いた作品で
「片腕を探して」よりも先に出来上がっていた、第一稿だったりします。
結局、投稿しなかったのですが、割りと気に入っていたので残しておきました。
SSFCに投稿する際、コレ一本で!というくらい気合の入った一本を作るんですが
前回と今回に限って言えば、最初の一稿目がボツになる。というパターン。
ちなみに前回の「囚われの身」の一稿目は、完全ボツで影も形もなく削除です(笑)
さてこの作品は、知る人ぞ知る。なひいろに肉薄している作品でして(笑)
だから投稿には向かんだろうと、断念した作品でもあります。
実際、この作品を投稿して、感想なんかもらった日にゃ・・・
私に何を言えって?と悶える事間違いなしだったので、結果オーライだったかな。
さてさて、この作品は主人公もネタも、何もかも「片腕〜」と同じです。
しかしながら、これほどまでに雰囲気の違うもんが出来るかなぁと、自分でも驚き(笑)
ネタの扱い方なんかは、どちらも一緒なんですけどねぇ。
「片腕〜」のあとがきには書きませんでしたが、ミロのビーナスについて
最初に発掘された際、ビーナスはいくつかの塊でその辺の農夫に(笑)発見されました。
これを見つけたフランス人の何とかさんが、興味を持って塊を繋ぎ合わせたら
美しい半裸の像になったという。
こりゃすげー。ってんで、残りの腕の部分を探したが、どうしても見つからない。
しかしながら、腕がなくとも見事な美しさの像は、人々の目を奪い
以降、腕の無い姿でも、一体の美術品として扱われる事になったのです。
このビーナスの腕については、最初から無かったとか、無かった方がいいなどと
たくさんの説が出ていますが、腕があった事は確かのようです。
あるはずの腕。それが無くても美しいなんて、ビーナスからしたら失礼もいいところ
あたしの腕を探さんかいっ!と怒っているかもしれませんね(笑)
題材にしたのは”あるはずの部分が無くても現状は維持できる”という
なんか矛盾しているような、ビーナスの姿からヒントを得ました。
このお話では、ある恋人同士が二人の間に時間を置いたところから始まります。
その時間の間に、リセットしようとした彼女と。
その時間の間に、何かに気が付いた彼氏と。
ちぐはぐだけど、根っこはやっぱり繋がっていたのね。とまぁ、ほのぼのな話でして。
彼女の心境っていうのは「片腕〜」の主人公と近いものがあります。
違いはどこかな。それでも前を向こうと思っている彼女と(この作品の主人公)
立ち止まってしまった彼女(「片腕〜」の主人公)の違いなのかな。
こっちの作品の彼女は、結局彼氏を嫌いになんてなれなかった。
それだけの違いなんですけど、こんなに大きな差となって作品に現れるんですねぇ。
不思議だなぁ<お前が言うなっての〜
ぶっちゃけてしまえば、どちらもひいろが感じたことを作品に起こしました。
じゃぁ、ひいろはどっちに近いのかって?
・・・どっちもさ。
だから、この二つの作品が書けたんだと思うしね。
人の心、人の気持ちに不変なんてありえないですからね。
だから私の気持ちも絶えず変化しているし、どっちの彼女にも成り得るのだと。
結局、投稿できなかったし。自分を見ているみたいで嫌だったんですけど(笑)
ドラマみたいな終り方するこの作品は、好きだったりします。
あぁ、勘違いしないで下さいね。
どちらもひいろに近い話だけど、どちらもひいろの現状とは違いますから(笑)
今となっては、どっちを投稿したら良かったのかなんて、判りません。
それでも二つの作品が出来上がって、こうしてみなさんの前にあるのだから
読み手のみなさんが、それぞれに楽しんでいただけたらと思います。
ちなみにこの作品のタイトル。アップする前につけました(笑)
「片腕〜」の場合は、探し物なんですが、こちらは落し物なんです。
どっちも探しもんやんけ!と思われるかもしれませんが
探そうとするのと、落としちゃった〜っていうのとは違うでしょう?
この作品では、ビーナスの腕は「あるはずの大切なもの」という意味合いで
無くても美しいけれど、美しいだけなら他にもあるという感じですかね。
二人の間に置いた距離、時間。それさえも大切と思うか
自ら落としてきてしまったと後悔する。
この二人の気持ちのすれ違いが「片腕〜」と違った雰囲気になったのだと思います。
同じ題材、同じ設定で出来た二つの作品
「片腕を探して」と「それぞれの落し物」
どっちの作品がお好みでした?。
どちらも、またどっちかひとつでも、気に入っていただけたら嬉しいです。