14.白紙
3月5日。
今日で十四日目。二週間続いたよ。
爆弾発言する。
信じられないと自分でも思うんだけど。安原に、しばらく付き合ってやろうかなぁって。
あ。そういう意味じゃなくてね。
今日も誘われたから、ご飯食べに行って来たんだ。
"あの日のあの事"があったっていうのに、よくそんな気分になったな自分。
・・・しつこかったんだよね、安原の奴。
どうやら先月、私がなにやら"やらかした"ってのを、うすうす感づいてたみたいで。
そんなに挙動不審だったかな、私?最近やっと吹っ切れてきたと思ってたんだけど。
なんか遠回りな聞き方してきて、鬱陶しくなって、とりあえずぶっちゃけといた。
安原とは友達、のつもりだったから。まぁ、言ってもいいかなと思って。
そしたら、怒ってんの。で、すごい悲しそうな顔してんの。
まるで、自分が悪いみたいな、そんな顔。
それ見てたら、ものすごく自分が悪い事をしたみたいな気がして。
初めて。"あの日のあの事"を少しだけ後悔したんだ。
「フラフラしてんなら、俺と付き合え。繋ぎとめといてやるから」
とか、言ってんの。安原のクセに。
何様、っていうくらい、強気発言だよね。本当に。
まず、その強気に驚いて。それから言ってる意味に気がついて驚いて。
前から好きだったけどとか、なんかぐちゃぐちゃ言ってて。
それなら、さっさと言えよなぁ、て。脱力。
そうしたら、あんなことする前に、少しは考えてたかもしれない。
私だってね、愛のないセックスだったら、ちょっと考えちゃうっての。
だけど、相手の人は少なからず、好きでいてくれたんだよ。私の事。
こんな私の事を好きでいてくれたんだよ、そして受け止めてくれたんだよ。
どうでもいいっていう、投げやりな私に、教えてくれたんだよ。
そういう優しい人だった。好きにならなかったのが、不思議なくらい。
安原、あんたにそんなこと出来るの?その覚悟があるの?
いまさら、白紙になんて戻せるわけ無いじゃん。
キレイな身体に戻れるわけ、無いじゃん。