40.どきどき

 

 

3月30日。

今日で三十九日目。
今更だけど、すごい緊張した。
安原とデートするのって、もしかしてもしかすると。
あの、夢なんじゃない?て思うような出来事から丁度一週間後。
あの夜、走って追いかけてきてくれた、劇的なあの日。
その一週間後に、またデートできたのって何か不思議だね。
あの日から今日までの間、私はひどい女で居たなんて嘘みたいでしょ?

隣でいつもどおり運転する安原をチラッと見たりして。
急なカーブで、あいつが私の身体を押さえるみたいに左腕伸ばしたときとか。
車をバックさせる時、助手席のシートに手をかけたときとか。
何かそんなくだらないことばっかりにどきどきしてた。
今更でしょって、自分に言い聞かせて。それでもやっぱり、どきどきしたの。

友達同士だったときにも、同じ仕草してたよね。
でもあの時はなんとも思わなかったの。ちーっともね。
不思議、不思議。
そこにどんな変化があるんだろうね。

振り返った顔にキスしたいなって思ったのも。
ちょっと先を歩く安原の腕を組みたいなって思ったのも。
唐突に抱きしめてもらいたいなって思ったのも。
そんな風に思う自分にも、そう思わせる安原にも。
バカみたいだけどね、どきどきしたんだ。

こういう気持ちがすきなのかな。愛してるってやつなのかな。
だけど、愛しいっていう気持ちなら判るよ。
口にするとすごく恥ずかしいから、言ってやらないけど。

どきどきさせる安原は、ちょっと愛しいんだ。

 

 

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