39.証明

 

 

3月29日。

今日で三十八日目。
昨日の日記で、電話するって自分に約束したから。安原に電話した。
昨日の朝の唐突の出来事で、私の下がり気味のテンションは一気に上昇。
嬉しかったとか、そういうんじゃないんだけど。だけど。
なんだか急に、安原の事を考えられるようになって。
そうしたら自然と声が聞きたくなって電話した。

電話の向こうの安原は、ちょっとほっとした様に笑ってた。
顔みられたから、安心したって、そう一言。
何が辛いとか、何が苦しいとか。そんなもんは言わなきゃわかんないけど
でも、顔を見ることでわかることだってあるから。
そう安原は言ってた。

一番近くに居るのに、腹を割って話せないことなんてあるかよ。って

ふてくされて安原は言ったけど。
それはそうだな、なんて思ったんだけどね。
あるんだよ。安原。
だって私は、話せなかったんだよ。話すの、辛かったんだよ。

だけどね、ちょっとだけ。
安原の存在って、私にとってどれだけ大切かって言うのがわかった。
唐突にやってきて、たったあれだけのことで気持ちを変えてくれた。
だからね、恋人とか友達とかそんなのどうでもよくて。
安原が居てくれたら、乗り切れる憂鬱もあるのかなって思った。
それって、恋人の意味とかすっとばして。
安原が私の傍に居る証明みたいに思えて。
だから、嬉しかったよ。

傘、返すから。今度会おうね。

 

 

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