46.視線

 

 

4月5日。

今日で四十六日目。
何故か、知らない人と目が会う。
助手席に載って、ぼんやり外を見ていると。すれ違いざまに視線が合う。
ぱちんと合わさった視線って、ものすごく居心地が悪くて。
だけど、ふっとそらせなくてじっと見ちゃうんだよね。
不思議なことに、知らない東南アジア系の外国人さんと目があって。
困ったなぁと苦笑してたら、手を振られた。
うあっ。と更に困っていたら、向こうはものすごく元気に手を振って。
だから何故か、ぺこりと頭を下げてしまう私。
昔から、知らない人とよく視線が交わるんだよね。
それだけ、あれこれ見てるって言うことなのかなぁ・・・。

随分昔の話だけど、
高校の頃電車の中で東南アジア系の人(また、東南アジア系だ)と目が合った。
その時は電車に乗り込む時から、どこからか視線を感じていて。
きょろきょろしながら乗り込んだんだよね。
で、どうやらこの車両からの視線だと気がついて、またきょろきょろしてたら。
ぱちんと目が合った。東南アジア系の、外国人さん。
あ。あの人が見てたんだ。と気が付いたところで逸らして置けばよかったのに。
また、じっと視線が交わっちゃったから洒落にならなくて。
距離にすれば、一メートルもないところにその人が居て。
何を思ったかその人、ずんずん近寄ってきて、イキナリ指輪を差し出して。
「ケッコン、シテクダサーイ」と、きた。
うそやんっ。って、思い切り後ずさると、後ろは当たり前だけど行き止まりで。
東南アジア系のお友達数人に囲まれて、イキナリウェディングソングの大合唱。
一緒に居た友達は、かなり離れた所で大爆笑。
電車の中では、突如起こったこの事件に、みんな手拍子で歌ってたり笑ってたり。
もちろん、指輪なんて受け取れないし、かといって英語もしゃべれないから。
とにかく、苦笑いしてぶんぶん首を振った。
笑い話だけど、これ本当に本当の話。

視線って、怖いよね。本当に。
ふとそんな昔の話を思い出してしまったよ。

 

 

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