32.夢なのか?

 

 

3月22日。

今日で三十二日目。
久しぶりに私が運転してデートに出かけた。安原の車は現在車検中。奴の代車代が勿体無いので、デートなら私が。とお母さんの車を借りた。元々あんまり運転は得意じゃないんだけど、その通り最悪な結果を招いた。
ハンドル握るの久しぶりでね。ものすごい緊張しながら運転していたんだけど、安原の奴、隣でうるさくてさ。
今ぶつかりそうだったとか、ブレーキが遅いとかもう、イライラしちゃって。
緊張の上にイライラで、もう極限状態。
そんな状態の時、交差点で右折の時にちょっとタイミングが悪かったのね。当りそうだったのかな。対向車がものすごいスピードですっ飛んできてて。
私が悪いの?と、ちょっと思うくらい向こうが猛スピードだったんだけど。
それで安原が大激怒・・・私に。
「こんな運転に付き合ってられるか」とか言われて、売り言葉に買い言葉。近くのスーパーの駐車場に止めて、車の外まで聞えそうな大喧嘩。
最後には、我慢し切れなかったのか安原が車を飛び出して、おしまい。
車の中に取り残されて、け。歩いて帰れ!とか猛烈にムカついてたんだけど・・・。
だけど急に怖くなっちゃって。一人で運転して帰らなくちゃ。と思ったら。
さっきの信号通りたくないなとか、でも他の道知らないしなぁって、もう大混乱。
悔しくて情けなくて、もうワンワン泣いてた。
気がついたら外が暗くなっていて。暗い道なんてもっと怖くて帰れなくなった。
安原から電話があった時には、外は真っ暗。
「家まで行ったのに帰ってないから」って、安原の電話に思わず泣いてた。
怖くて帰れなくなっちゃったこととか。我ながら馬鹿みたいなんだけどね。
そしたらあいつ、そもそも自分の家とは反対の私の家まで来たのに、今度は走って駆けつけてくれたんだ。
ぜいぜい。言いながら車の窓を叩く人が暗闇から現れて、死ぬほど怖かったんだけど、それが安原だって気がついて、私車から飛び出して抱きついてた。
汗でぐっしょりのTシャツが、抱きついていても気持ち悪かったけど。
すごく嬉しかった。
これって、ドラマみたいじゃない?夢のなのかもって、思わず思ったくらい。
悔しいけれど、憎いくらい絶好のタイミングで現れるあいつが。
やっぱり好きなのかもって、思った瞬間。
これもまた、夢なのかなんて、思っちゃったりしたけどね。

 

 

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